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技術情報・技術コラム

試験装置は一から作るべき?市販の計測器を活かした試験装置・試験治具という選択肢

製品の試験や検査に使う装置を新しく用意しようとするとき、「専用の装置を一から設計してもらうしかないのだろうか」と考える方は少なくありません。しかし実際の開発現場では、測定そのものを担う部分に市販の計測器を用い、その周辺を自社の要求に合わせて作り込むという進め方が、コスト・納期・信頼性のいずれの面でも合理的になるケースが数多くあります。

一方で、市販の計測器をそのまま並べただけでは、現場が求める試験は成立しません。計測器は本来、一つの測定対象を作業者が丁寧に測ることを前提に設計されており、複数点の測定や連続した自動判定といった生産現場の要求には、そのままでは応えきれないためです。

当コラムでは、市販の計測器を活かして試験装置・試験治具を製作することの優位性と、汎用の計測器だけでは越えられない限界、そしてその限界を埋めるために必要となる設計上のノウハウについて解説します。

試験装置を一から作るか、市販の計測器を活かすか

試験装置の製作を検討する際、最初に判断が分かれるのが、測定回路そのものを専用設計するのか、既製の計測器を組み込むのかという点です。この選択は、装置の開発費用と期間だけでなく、導入後の運用のしやすさにまで影響します。

測定回路を一から起こす場合、増幅、A/D変換、基準電源、温度補償といった要素をすべて自前で設計し、さらにその測定確度をどのように保証するのかという課題まで引き受けることになります。要求される精度が高いほど、この検証と校正にかかる工数は膨らみ、装置全体のコストと開発期間を押し上げる要因になります。

これに対して市販の計測器には、メーカーが保証する測定確度と、国家標準にトレーサブルな校正の体制がすでに備わっています。定期校正の仕組みも整っており、社内の品質管理や取引先の監査で測定の妥当性を問われた際にも、校正証明書を示すことで説明が済みます。測定の正しさを外部の信頼に預けられるという点は、装置を一から作る場合との決定的な差だと言えます。

保守の面でも違いが出ます。専用設計の測定回路は、故障したときに設計した会社でなければ手が出せないことが多く、使用している部品が生産終了になれば同等品の選定からやり直しになります。市販の計測器であれば、修理や代替機の手配、後継機種への置き換えといった選択肢が残されており、装置を長く使い続けるうえでのリスクを小さく抑えられます。

つまり「測る」という機能は信頼できる市販の計測器に任せ、「どう測るか」「どう自動化するか」という部分を自社の要求に合わせて作り込む。この役割分担こそが、試験装置を現実的なコストと期間で成立させる考え方になります。

それでも市販の計測器だけでは試験が回らない理由

もっとも、市販の計測器を作業台に並べただけで試験が完結するわけではありません。限界があるのは計測器そのものの性能ではなく、測定の前後にある工程だからです。ここでは、現場で実際につまずきやすい三つの点を取り上げます。

一台の計測器で測れるのは、基本的に一箇所だけ

多くの計測器は、一つの入力に対して一つの測定対象を接続することを前提に作られています。ところが実際の試験では、一つの製品について複数の端子や複数の項目を測りたい、あるいは複数の製品を続けて測りたいという場面がほとんどです。一対一で設計されたものを、一対多で使いたいという要求が常につきまといます。

この差を埋めようとすると、チャンネル数の多い上位機種を導入する、あるいは計測器を測定点の数だけ並べるという方法が考えられます。しかしいずれも、費用と設置スペースが測定点の数に比例して膨らみます。試験項目が増えるたびに計測器を買い足していく運用は、コストの面でも省スペースの面でも現実的とは言えません。

段取りと判定が人に依存する

波形観測器を例に考えると分かりやすいでしょう。プローブを当てる位置を変え、垂直軸と時間軸のレンジを合わせ、トリガの条件を設定し、画面に現れた波形を読み取って合否を判断する。この一連の作業は、計測器がどれほど高精度であっても、人の手と目に委ねられています。

その結果、測定そのものは正確でも、作業者によって設定や読み取りの基準が揺れ、試験にかかる時間も安定しません。測定値を紙や表計算ソフトに転記する運用が残っていれば、そこにも転記ミスの余地が生まれます。試験の限界が測定確度ではなく段取りと判定にあるというのは、こうした理由によるものです。

切り替えるべき信号は、電気だけにとどまらない

近年はもう一つ、事情が加わっています。試験の対象が電圧や電流といった電気的な特性にとどまらず、映像信号や通信ラインにまで広がってきたことです。一台の装置で電気特性の測定と通信の疎通確認をまとめて行いたい、複数の機種を同じラインで流したいといった要求が出てくると、切り替えなければならない信号の種類そのものが増えていきます。

汎用の計測器や既製のスイッチをそのまま流用しても、こうした要求には対応しきれません。測定に使う計測器は市販品で十分でも、それらをどうつなぎ、どう切り替えるかという部分は、試験の内容に合わせて設計するほかないのが実情です。

市販の計測器を活かす試験装置に求められる設計ノウハウ

計測器の限界を埋め、試験全体を成立させる役割を担うのが、計測器の周辺を受け持つ試験装置・試験治具です。ここには、単に信号をつなぎ替えるだけでは済まない設計上の勘所があります。

計測ラインの切り替え ― 何で切り替えるかで測定値が変わる

一台の計測器で複数点を順番に測るには、測定ラインを切り替えるスイッチング部が必要になります。ここで重要になるのが、どの素子で切り替えるのかという選定です。単純に切り替えられればよいというものではありません。

半導体スイッチは高速に動作し、動作回数の制約も少ないため扱いやすい選択肢ですが、遮断したつもりでもわずかな漏れ電流が残ります。消費電流のように大きな値を扱う試験では問題になりませんが、暗電流や絶縁抵抗のように微小な領域を測る試験では、この漏れ電流が測定値そのものを狂わせる原因になります。

そのため、微小電流や絶縁を扱う試験では、あえて機械式のリレーを採用し、接点を物理的に開いて測定ラインを完全に切り離す設計が有効になります。ただし機械式リレーには接点の動作回数に寿命があり、接触抵抗や接点で生じるわずかな熱起電力が測定値に影響することもあります。想定する動作回数から寿命を見積もったうえで、消耗する部位を交換しやすい構造にしておくといった配慮が欠かせません。

速度を取るのか、遮断の確実さを取るのか。測定対象と試験項目に応じてこの判断を一つずつ積み重ねていく点にこそ、切り替え設計のノウハウがあります。

高速信号の切り替えには、別の設計思想が要る

映像信号や通信ラインの切り替えは、電圧や電流の切り替えとは考え方が異なります。信号の周波数が高くなるほど、配線のインピーダンス、引き回しの長さ、隣接する線とのクロストークが波形の品質を左右するためです。

導通させさえすればよいという発想で配線してしまうと、切り替えた瞬間に通信が確立しない、映像が乱れるといった不具合が現れます。回路図の上では正しくても、基板のパターン設計まで含めて信号の品質を保つ配慮がなければ成立しません。回路設計と基板設計の両方を理解したうえで検討すべき領域だと言えます。

制御とロギングによる自動化

切り替えの仕組みが整えば、次は一連の試験を自動で流す段階になります。多くの計測器は通信インターフェースを備えており、外部のパソコンや制御基板から測定条件の設定と測定値の取得を行うことができます。

測定レンジの設定、測定ラインの切り替え、測定値の取得、判定基準との照合、そして結果の記録までを一つのシーケンスとしてつなぐことで、これまで作業者に委ねられていた段取りと判定が装置側へ移ります。試験時間とセッティング時間が短縮されるだけでなく、判定基準が統一され、測定データがそのまま蓄積されていくため、不具合が発生したときの遡及調査にも役立ちます。

立ち上げ・段取り替え・保守までを見据える

試験装置は導入して終わりではなく、何年にもわたって現場で動き続けます。機種が切り替わるたびに装置を作り直すのではなく、治具の交換と設定の切り替えで複数機種を流せる構造にしておけば、兼用のラインとして運用でき、立ち上げのたびに発生する調整の手間も減らせます。

加えて、消耗する部位をあらかじめ把握しやすくしておくこと、待機時の消費電力を抑えること、限られた設置スペースに収まるよう小型化することも、長く使われる装置には求められます。こうした要求はいずれも装置の構造や部品選定に跳ね返るため、設計の早い段階から織り込んでおく必要があります。

既存の試験装置を活かすという選択肢

すでに試験装置をお使いの場合、すべてを作り替えるのではなく、既存の装置に手を入れるという方法もあります。測定点を増やしたい、新しい機種にも対応させたい、手作業で行っている切り替えを自動化したいといった要望は、改造によって実現できる場合が少なくありません。

問題になるのは、装置を製作したメーカーが対応できないケースです。事業を終えている、あるいは当時の担当者が在籍していないといった理由で改造を断られ、装置ごと更新するしかないと諦めてしまう例は珍しくありません。しかし、現物を確認し、制御仕様と動作仕様を読み解くことができれば、他社が製作した装置であっても機能を追加することは可能です。装置を丸ごと入れ替えるより、費用も期間も抑えられるケースが多くあります。

試験装置・試験治具のご相談はアイディアイへ

組み込み機器・ハードウェア設計製作.comを運営するアイディアイは、完全カスタマイズ品の試験装置に加え、市販の汎用計測器を組み込んだ準カスタマイズ品の試験装置や、より簡易な試験治具の設計・製作も行っています。

「試験装置を一から作るほどではないが、試験項目を増やしたい」「汎用の計測器だけでは作業効率が上がらない」「手作業で行っている切り替えや判定を自動化したい」。こうしたご相談を、大手精密機器メーカーをはじめ多様な業界のメーカー様から数多くいただいています。

当社は、回路設計・パターン設計から部品調達・実装、装置設計・筐体設計、組み立てまでを社内で一貫して対応しており、さらにハードウェアとソフトウェアの双方を社内で設計しています。そのため、切り替え素子の選定や基板の設計といったハードウェア側の判断と、計測器の制御や判定シーケンスといったソフトウェア側の要求を、切り離すことなく検討することができます。試験装置のように両者が密接に絡み合う分野では、この一貫した体制が仕様の実現度と手戻りの少なさに直結します。

試験装置や試験治具の製作、既存装置の改造をご検討の皆様、試験内容や試験項目、現在の作業内容をお聞かせいただければ、コストと品質の両面から最適な仕様をご提案いたします。構想段階のご相談からで構いませんので、お気軽に当社までお問い合わせください。

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